その井上涼子という名の女性がオイラの家にやって来たのは、もう十数年前の今頃の季節だった。
何か色々と込み入った事情があって、とにかくオイラの家に居候することになった彼女。
ここで彼女が「一つ屋根の下に男と女が二人きりになったら、することは唯一つ。ばっちこーい!」なんて言い出すような、貞操観念と股関節の緩い女性だったら話は早かったのだが、あいにくとこのソフトは18才以上推奨ですらないのでそうもいかない。
「井上さんだと堅苦しいから、気軽に涼子と呼んでくれ」と彼女は言うが、急に押しかけてきた女性をいきなり馴れ馴れしく名前で呼ぶほどオイラは図々しい人間ではない。
ゲーム中のオイラがいくら「涼子ちゃん」と連呼しようが、オイラの脳内ではあくまで呼称は「井上さん」なのであった。
毎日夜の11時にはきっちりと就寝してしまう井上さんと、いつも帰りが夜遅くなるオイラとでは、当然家の中でかち合うことは滅多にない。
朝、それぞれの出勤、通学前には顔を合わすチャンスが無いわけではないが、いくらなんでもそんな朝のクソ忙しい時間帯にセガサターンの電源を入れるほど、オイラは呑気な人間ではない。
夕食は帰りに外で済ませてくるオイラ。井上さんは家で一人で勝手に飯を食っているのだろう。
夜遅く帰ってきては、階段下のホワイトボードに伝言がないかチェックし、井上さんの部屋の前から様子を伺って「ああ、今日も居るな。」と確認してからサターンの電源を切る。平日はそんな繰り返しだ。
定期的に顔を合わせてないとバッドエンドになりますよ、などと脅されているので、休日の昼間、開いた時間などに、井上さんと顔を合わせて話をすることもあったのだが、ぶっちゃけた話、井上さんはいつもどうでもいい内容の面白くも何ともない話を、一方的にべらべら喋ってくるばかり。
正直、このどうでもいい話に付き合わされるのは、かなりの苦痛なので、終いには井上さんが居そうな時間帯にゲームを起動させるときは、「居ませんように、どっかに出かけてますように。」と念じながら電源スイッチを押すようになってしまった。
こうなると、何の為にわざわざこんなゲームをやっているのか、自分でも分からなくなるくらいだ。
内蔵時計を利用して、ゲームを起動させていないときでも、常に24時間何らかの形で対象が蠢いているというのは、実は相当に息苦しいものだ。
好きな時間にゲームにアプローチすればいいだけなのかもしれないが、気分的にどうしても、こちらも24時間そのゲームに囚われているように感じてしまい、落ち着かないことおびただしい。
そうやって気になりつつも、やがてはゲームを起動する間隔がだんだん開いていって、最後にはほったらかしのままフェードアウトしてしまうのは、このゲームを遊ばれた方の多くが体験したパターンだと思うが、しかしそうやってほったらかしにしている間だ、同じサターンでスリーダーティードワーブスなんかを遊んでいるときに、ふと「そう言えば家にはまだ井上さんが居るんだよな。」などと思い出してしまい、気が滅入ったりしたものだ。
意を決して久方ぶりに家に帰ったら、置き手紙を残して井上さんは既に我が家を去った後だった。
オイラがあまりにも家に帰ってこないので、そんなに自分が迷惑だったのかと深く思い詰め、結局知人のアパートに引っ越すことにしたそうだ。
早い話がバッドエンドなのだが、これを読んだ時、「ああ、やっと居なくなったのか。」と、肩の荷が下りたようにホッとしたのを覚えている。
正直な話、面白くもなんともないゲームだし、井上さんの碌でもない話を聞かされるのは、心底嫌だったのだけれど、それでもこのゲーム内の人物との実に奇妙な距離感は、妙に後を引くものがあった。
どことなく居心地の悪い、ちょっとよそよそしい人間関係や、どうでもいい話をイライラしながら聞いたり、同居人に見つからないように家の中をこそこそしたりする、そんないたたまれない部分も含めて、オイラは実はこの奇妙なゲームをけっこう気に入っていたんじゃないかと思う。
その証拠に、あれだけ最後までよそよそしい関係だったにも拘わらず、それから間もない夏の日に、井上さんはやけにケバく変身して我が家に舞い戻ってきたりしたのだから。
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タグ:萌えと癒し



突然フリーズしたうえに
そのまま本体内蔵のセーブデータ全破壊という暴挙に出て、
再フリーズが怖くて時計いじりプレイに変えたら
別れ際に抱きついてくれました(笑)。
でもやっぱりケバくなって帰ってきましたね〜
アメリカナイズされたのかと当時は思いました。
なんかこういったゲームも懐かしいですね〜。
あと似たようなやつで、
女の子の生首を植木鉢に植えて育てようとするサイコなゲームもありましたね〜。
セーブデータをぶち壊す井上さんの魔性の女ぶりは、有名ですよね。
それこそXBOX360のレッドリング並みによく聞く話なので、発症しなかったオイラは運が良かったのかな。
続編でケバくなったときは、ぐれたんじゃないかと心配しましたが、中身は相変わらずのオヤジ臭い&説教好きだったんで安心しました。
>hat89さん
ポケステ使って無理矢理移植したのがありますね。
なんかこういうチャレンジャブルなギャルゲーって少なくなったような気がします。
生首は韓国産のTOMAKですね。PS2版はワゴンで発酵してましたけど・・・。
TOMAKは続編が横スクロールシューティング(自機は当然生首)になっていて、別な意味でチャレンジャブルでした。