「またしょうもないとこで遊んでますね。あんなもん店がえげつなく設定弄ってるに決まってるでしょうが。」
そんな事も百も承知の上で遊んでいたのだから、まこと人間というのは愚かな生き物だよなぁ。
「あんただけだよ、そんなの!」
店にはオイラを含めて4人くらい客が居たのかな?みんなサラリーマン風でな。平日の真昼間から、仕事もしねえで何やってんだこいつら、と思ったよ。
「人のこと言えるか!」
そこに程無くして二人組の男が入店してきたんだ。これがどうやら客じゃないらしい。二人組のうちの背の高い男は入り口近くの壁に寄りかかって腕を組んでる。そして小柄な方の男が店内に一人だけ居た従業員に向かって何やらまくし立て始めたんだ。
どうやらその男は日本人ではなさそうでな。喋る言葉も訛っていて今ひとつ聞き取り辛かったんだが、どうやらこの店と二人組との間で何らかのトラブルがあって、お前じゃ埒が明かないから店の責任者のササキサンに連絡をつけろ、と言ったような内容なんだ。
「あんぽんたんが真昼間から呑気にポーカー叩いてる真横で、何やら裏の世界のトラブル勃発ですか。」
あんぽんたんで悪かったな!まぁ従業員は完全に雇われの人間だから、確かにそんな場では埒が明かないわけだ。だけど従業員も、立場的にそうそうササキサンに連絡つける訳にもいかないようで、何とか適当にいなそうとしている。小柄な男はだんだん苛立ってどんどん声が大きくなってくる。そんなやり取りをしばらくしていたら、店の奥のほうから体格のいい男がぬーっと姿を現したんだ。
「用心棒かなんかだったんですか?」
うーん、どうだったんだろうな。そのガタイの男が野太い声で威嚇の声をあげた。そしたらな、入り口付近の壁に寄りかかっていた背の高い方の男が物凄いスピードで動いてな。その手にはいつの間にかバットが握られてるんだ。そしてそのバットでガタイのいい男の脳天に容赦なく一撃くらわせてな。
「ひいいいいい。」
オイラもそれまでに人間がバットで殴られる光景は何度か目にした事あったけど、この時のそれは訳が違った。殴られた奴が死んでも別に構わないような一撃だった。
「人間がバットで殴られる光景って、そうそう何度も目にするようなもんじゃないと思いますけど。」
nWoスティングが橋本真也をバットでぶん殴った時は、もっと優しく殴ってたぞ!
「いや、あの人は普段はとても性格のいい人だったそうですから。」
あ、そうか。でな、ガタイのいい男は床にうつ伏せに倒れて、脳天から血流してかすかに呻いてるんだ。そして背の高い男は倒れてる男に近寄ってバット振り被って止めの一撃をくらわせようとしたんだ。
「うわぁ。」
まぁ止めは寸前で思いとどまったようでな。思い直すと今度はバット片手に店内を徘徊し始めた。ゲーム機の間を縫うようにうろうろ歩き回ってた。ついさっき人間を容赦なくバットで殴った、人の命をおそらくなんとも思ってない奴が、こっちの真横数十センチの距離を何度も何度も往復するんだぞ!小柄な男は従業員に向かって「ササキサンに電話しなさい!早くササキサンに電話しなさいよ!」とまくし立ててるし。
「その間、あなたはどうされてたんですか?」
一心不乱に画面を凝視してポーカー叩いていた。
「大した肝っ玉ですな。」
逆だよ!そんなシチュエーションで周りを見回す度胸なんてねえよ!余計な事をこれ以上目撃したら堪らないからな。もう役が揃うとかそんな事一切お構い無しに、震える手でボタンをひたすら叩いていた。心の中で「早くササキサンに電話しろ!そしてこの場をなんとか穏便に鎮めろ!」って祈りながらな。
「そんな場所に遊びに行った報いですよね、それって。」
ほっとけ!幸いな事にしばらくして二人組は店を出て行ったんだ。長居しちゃまずいとでも思ったのかな。従業員はガタイのいい男の介抱に掛かりきりになって、そしてオイラは時計眺めてきっちり一分経ったのを確認してから、ベットの残りあるのをほったらかして席を立って店を出た。
「なんで一分数える必要があるんですか。」
すぐに店を出て行って、気が変わって引き返してきた二人組に階段とかで鉢合わせしちゃまずいだろ!おかしい事にオイラ以外の客もみんなオイラと同じタイミングで席を立ったんだ。みんなも一分数えてたんだな。ダッシュで階段駆け下りて外に出たら、そこはいつもと変わらぬ人がひしめき合う光景でな。ついさっきまでの悪夢のようなシチュエーションから、急にこの日常の光景に飛び出したギャップが強くて、街中を歩いてもまるで白昼夢を見ているような感じだった。と言うわけで二話目終了な。蝋燭消しとくぞ。
「ほんとにあった怖い話って、本来こういうもんじゃないと思うんだけどなぁ・・・・。」
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